焼肉の歴史に想いを馳せつつ鮮度抜群のホルモンをいただく
長興屋(東京・西新井)
東京都足立区興野1-13-17TEL:03-3849-5490
16:00-21:00・土日祝12:00-21:00/木休
予算:3000〜5000円
予約可
東京23区内でも住民以外はあまり訪れる事がない(と思われる)区のひとつ、足立区。しかも最寄り駅から徒歩15分ほどの住宅地となると、わざわざ遠方から来る人はなかなかいないはずだ。近くには朝鮮学校や韓国食材店もあり、プチコリアンタウンの様相を呈している。このような場所に、地元の住民達で連日にぎわう焼肉店がある。
2012年時点で創業56年だというから、その歴史はほぼ日本焼肉史と重なる。
一軒家の店舗は外観だけでも趣たっぷりだが、中はさらにすごい。手前にはカウンターと小上がり席、奥の座敷席は民家の部屋をそのまま使っているような感じだ。この個室の煙さは半端ではない。外に面した窓を開けたり、廊下に面した窓を閉めたり…など風の出入り口をコントロールする必要性がある。ある意味、男の腕の見せ所だ。
また、忙しく動き回るお母さんやお姉さんを、タイミングをうまく見計らって呼び止めて注文するのもある種の技量が問われるところ。要はそういった要素すべてを、ゆとりある心で楽しむ店なのだ。
メニューはカルビとロース以外は全てホルモン系。種類はあまり多くないが、このホルモン系がどれをとっても素晴らしい。
まず食べて欲しいのは「はちのす焼き」。黒い皮がついた、ヤンとセンマイの中間のような見た目だがぷりぷりとした食感が独特で心地よい。下処理の悪さが目立ちやすい小袋も臭みがまったく感じられない。ホルモン(シマチョウ)もクニュクニュと口中で動きながら最後にぷつりと切れてくれる鮮度の良さだ。
また、メニューには書いていないが上みのの刺しは一押し。シャクシャクと小気味よい歯応えがクセになる。是非頼みたい一品だ。
オレンジがかったつけダレは少し酸味がある独特の味。しっかりとした味でありながら意外としつこさを感じず後をひく、絶妙な調合だ。
お店一押しの「肉めし」はピリ辛味のチャーハンといった感じ。ガッツリ派ならばトライしてみてもいいかもしれない。
少人数で訪れたら是非カウンター席に陣取り、ご主人とコミュニケーションを取りたい。気さくで人当たりがよいご主人の笑顔の中には、美味しい焼肉を楽しんで欲しいという願いと、長年焼肉屋を続けてきた誇りが交互にかいまみえるような気がする。従業員の方々の笑顔も素晴らしく、老舗焼肉店で働いて来た日々が素晴らしいものだったと物語っているようだ。焼肉フリークならば一度は訪れておきたい名店である。
もはや文化財指定レベルの外観
上みの刺しはマスト
肉めし
<YAKINIQUESTよりヒトコト>
・はちのす焼き、上みの刺し。後はホルモン類を好みで
・奥の座敷席利用の場合、店の裏手にあるドアから入ることになるが、このアプローチがまた趣きたっぷりでたまらない