幻の牛「見島牛」との感動の出会い。
その興奮も覚めやらぬうちに萩を後にした我々は
クルマを飛ばし、一路下関に向かった。
一般的には、下関といえばフグなどの海産物の印象が強いだろう。
しかし、実は知る人ぞ知る焼肉タウンでもあるのだ。
戦前、朝鮮半島への玄関口として栄えた下関は、
かねてから彼の地との交流が盛んな土地だった。
繁華街にある商店街は別名「リトル・プサン」と呼ばれており、
そこには数多くの焼肉店が軒を並べている、と聞く。
早くから肉食文化に深く親しんでいた土地では
焼肉も独自の発展をしてることが往々にしてある。
日本中の焼肉を食べ尽くしたいと思っている我々にとっては
是非とも訪れておきたい地のひとつだったのである。
______________________
下関に到着すると、辺りはもうすっかり暗くなっていた。
地図を片手に「グリーンモール商店街」を目指す。
10分ほど歩き、どうやらこの辺らしい、という所にたどり着いた。
大阪・鶴橋に近いようなコリアンタウンをイメージしていたが、
実際はややうら寂しい雰囲気がただよう商店街であった。
既に閉まっている店も多く、暗がりの中を歩く人も殆どいない。
数十メートルおきに、ぽつりぽつりと看板の灯が見えるが、
そのうちのいくつかが焼肉店のようだった。
今夜はあと一軒だけにしておこう。
そう決めて「優太郎」という店に入った。
いかにも地元の家族経営店といった風情の店内。
お客さんは我々の他に一組ほど。
メニューをさっと見て、1000円を切るタンやハラミ等を注文した。
正直、それほど大きな期待はしていなかった。
まだ見島牛の感動の余韻をひきずっていたし、
下関の焼肉ストリートが思ったほどにぎわっておらず
肩すかしを喰らったような気持ちだったことも確かだ。
しかし、そのハラミを口にした途端、皆の眼が見開かれた。
美味い。少なくともこの価格とは思えないクオリティだ。
ホルモンも新鮮で、クニュクニュとした食感が心地よい。
味付けはやや塩気が濃いが、方向性としては好みだ。
やはり、さすがは焼肉タウン。
秘められた大いなるポテンシャルを感じつつ、
我々はホテルに戻ったのであった。
(つづく)
コメントを残す