客本意の姿勢が伝わる、肉好きのための空間
肉人(東京・下北沢)
東京都世田谷区北沢2-9-3 Kビル1FTEL:03-3465-5557
18:00-27:00/不定休
予算:3000〜4000円
予約可
店名は「肉」に「人」と書いて「にくんちゅ」と読む。沖縄の言葉をもじったネーミング同様、そこで食べられる肉もまた一度知ったら忘れられないものになるだろう。
店構えは一般的な街のホルモン焼き屋そのもの。狭めの店内に小さめのテーブルやカウンター、むき出しの排煙ダクトといった光景が外からでも確認でき、気取らない空気の中、お手軽価格で焼肉を楽しめる店だと想像できる。それは全く間違いではないが、そこで体験するホスピタリティーは予想以上のものになるかもしれない。
まず驚かされたのはメニューに小さく書かれた案内文。曰く、塩、タレなどの味付けはもちろん、肉の大きさや厚さのカット指定、辛さの調節まで「できる限り」希望に応じてくれるという。おろしニンニクやワサビ等の薬味もしかり。注文を受けてから肉をカットするスタイルの証明であると同時に、とことん客本意な姿勢がうかがえる。
一方でユッケ*の卵を別皿で持ってきて「最初は肉だけで」と勧めたり、シマチョウの焼き方をさりげなくアドバイスしてきたりと、「肉人」らしいこだわりと肉愛もところどころにかいまみえる。
価格はリーズナブルなシモキタプライスだ。殆どのメニューが5-800円、高くても1000円台の前半*。ホルモン焼き中心ということを割り引いても安い。皿が小さいので一見一人前の量が少なく感じるがそうでもない。おそらくテーブルのサイズを考えて皿を小さくしているのだろう。
*訪問は2010年度
そして、カットや盛り付けの丁寧さからだろう、皿上の肉片ひとつひとつが実に美しい。失礼ながら店の雰囲気に反して美しい。小振りでシンプルな白い皿にぴっちりと並べられた肉は、いつまでも眺めていたくなるほどだ。
何度か訪問した印象では、肉質は日によって多少のばらつきがあるかもしれない。(とはいえ価格を考慮すればまったく問題ない程度ではあるが)必ず食べたいのは上タン。柔らかくミルキーであり、スジの部分をカットしてくれているので肉質が均一で焼きやすく味わいの輪郭もはっきりする。この体のホルモン焼き店でこういった繊細なカットをしてくれる店はあまりない。
ツラミも秀逸。特有の噛みごたえある食感は残しつつ、ある程度噛んだところですっと胃に落ちてくれる、身の程を知った奥ゆかしさ。これもカット技術のなせる技だろうか。その他、サイコロ状のハラミ、塩のホルモン(シマチョウ)、味噌ダレのハチノス等、どれもはずさない味だ。
また、味付けが濃すぎないことも嬉しい。ホルモン焼きにありがちな濃い味一辺倒ではなく、適度なレベルの下味なのだ。後は個々人の好みで調整を、ということかもしれない。テーブル上の塩つけダレなども酢を効かせたさっぱり味にするなど、東京のホルモン屋としては珍しい工夫がある。
店員さんは厨房の方を含め、皆若く見えるが親切丁寧に接してくれる。深夜まで営業していることも含め、とことん使いやすいお店なのだ。しかも少し前には三軒茶屋にも支店ができた。肉好きの仲間と、あるいはひとりでと、気軽に出かけたい。
柔らかな部分だけが切り出された上タン
塩のホルモン(シマチョウ)
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美しい上カルビ
<YAKINIQUESTよりヒトコト>
・上タン、ツラミ、ホルモン(シマチョウ)など
・混雑時間の予約は時間がやや前後する事があるので注意しよう