突然だが、焼肉における重要な要素の1つは「メンツ」である。
もしかしたら、一番のキーポイントかもしれないというくらいだ。
互いにヘンに気を使わず。誰も余計な事はせず。
ただ個々が肉に集中して焼き。かつマナーは守り。
こんな環境の下でのみ、最高の焼肉が焼けるのだ。
しかし、これがなかなか難しい。
よかれと思って一度に大量の肉を網上に載せる人。
よかれと思って皆の肉を焼き、しかも振り分ける人。
よかれと思って話や酒の行方にばかり夢中になる人。
結果的に皆の肉に対する注意力は削がれ、
肉と真剣に対峙する気持ちが次第に薄れてくる。
そうなると、もうそれは焼肉では無くなってしまう。
そんな、善意からくる悲劇が後を絶たないのである。
特に、東京ではこの傾向が強いように感じる。
だが、この日のメンツは奇跡的であった。
仕事の流れで焼肉に行った4人。
初顔合わせのこのメンツの、なんと全員が
「自分の肉は自分で焼く」派だったのだ。
事はまさに、あうんの呼吸で進行していった。
肉が運ばれる。皆無言で自分の分を取り、網に乗せる。
会話はしながらも目は肉から話さない。
絶妙のタイミングで口に運び、その味をしっかり堪能する。
そしてすかさず次の肉を焼き始める。
焼き方だって、誰も何も言わずに、当たり前のようにこれである。
こういう人がたくさん増えてきたら、東京はもっといい場所になる。
そう確信した、いい夜だった。
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