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うらやむべき浦島太郎

肉コラム

別れの季節であるはずの3月に、嬉しい再会があった。
相手は、とある女性。
といっても、ロマンチックな話はこれっぽっちもない。
何を隠そう、今から10年ほど前に私gypsyYLがはじめた
焼肉探究に少なからず影響を与えた人なのでである。
彼女は、当時私とYLがいた会社に勤める派遣社員であった。
一生懸命仕事をこなし、時々ドジなことをして周囲を和ませる彼女は
どこにでもいる普通のOLと同じだった。
ただひとつ、焼肉が異常に好きなことを除いては。
昼休み、普通のOLならば「CanCam」などを読むところ
彼女は旭屋出版ムックの「焼肉店」を血眼になってクリッピングしていた。
ダイエットのためでなく、夜の焼肉のためにランチを抜いていた。
飼っている犬の名は「カルビ」であった。
その焼肉に対する執念にも似た探究心に、
私とYLは大いに触発されたものだった。
それが今の「YAKINIQUEST」につながった訳なのだ。
ほどなく彼女は結婚し、旦那様の仕事の都合で海外へ。
そして今年、再び日本に戻ってきたのである。
再会の場所はもちろん焼肉屋。
「久しぶり」の挨拶もそこそこに、肉を網に並べる。
変わっていない。要所を押さえた箸さばきも、肉への集中力も。
ところが話しているうちに、ある事に気づいた。
彼女、我々がリスペクトしている店々を殆ど知らないのだ。
考えてみれば、確かに10年前はそれほど多くの店に行っていなかった。
ちょうど彼女が日本を発ったのと入れ替えくらいのタイミングで、
我々はあちこちの名店を訪ね歩くようになったのである。
ということは、だ。
彼女はこれから、“リスペクト店巡礼”の日々を送ることになる訳だ。
(しかも専業主婦で時間もあるので、頻繁に焼きに行けるようなのだ)
それって、我々が既に味わってしまったあの感動やこの感動を、
まっさらな、無垢な状態でイチから味わえるということじゃないか。
しかも、かなりの高確率で“当たり店”ばかりを巡れる。
・・・うらやましい。うらやまし過ぎる。
そんな「浦島太郎」なら、ちょっとなってみたかったぞ。
目の前で黙々とハラミを焼く彼女に、私は軽い嫉妬を覚えたのだった。
 
 
もちろん、彼女の巡礼の案内をする「亀」の役を
私が買って出たのは、言うまでもない。


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