こじんまりとした焼肉空間にどっぷりと身を委ねたい
はつかの(静岡・南伊東)
静岡県伊東市広野3-2-18TEL:0557-36-2848
18:00-24:00/無休
予算:4000〜6000円
予約可
もちろん人にもよるとは思うが、「ちょっと店がボロいくらいがむしろ気分を盛り上げる」というのは多くの焼肉好きが感じているところなのではないだろうか。全国で名店と呼ばれている焼肉店には何故かオンボロなところが多いように思う。もちろん我々YAKINIQUESTもそういう店にいくと心が踊ってしまう(奇麗な店ももちろん好きだが)。
伊豆で一番の味と評判の「はつかの」も、こういう意味ではかなり高ランクに位置づけられる一店だ。外見は小さな一軒家。引き戸を開けて一歩足を踏み込めばまるで映画のセットかのような典型的な焼肉ワールドが広がる。詰めて7-8人程度のカウンターと4人テーブル3つの小上がり。カウンター奥にはマスターとおかみさんが笑顔で立っている。
それ以上に特徴的なのは、満席になると人が動けるスペースがほぼ皆無な事。それゆえ独自のルールが幾つか存在する。注文は最初は自分で伝票に書き、追加は申告制。肉は客がカウンター越しに受け取るセミセルフスタイルだ。時には他の客の協力を得ながら食べるこの方式が、この小さな空間に独特のグルーヴ感をもたらしている。
ここでまず食べたいのは「ミノ刺」だ。鮮度はもちろん、コリコリとした食感と独特の味付けが相まって、他の店では食べられない味に仕上がっている。マスター曰く、ミノの肉厚な部分を”料理”しているからこの味になる、とのこと。
焼物では特上牛タン塩が秀逸。タンのやわらかな部分をやや薄めの大判にカットしてあり、さっと炙るくらいで食べると最高だ。適度な歯ごたえが楽しめる特上ハラミの塩も良い。タレで食べるならカルビが一番合うだろうか。その他ホルモンや上ロースなど、どれを食べても満足度が高い。皿状の肉はサイズやカットが一定でないので見た目は決して美しくないが、肉を余すところ無く美味しく食べて欲しいというマスターの気持ちが伝わってくる。
ちなみにこのマスターはお話し好きで、手が空くと芸能人の話とか肉の話とか色々してくれる。芸能人の話はある種のリップサービスなのだろうが、肉については「何でも聞いてくれ」と言ってはばからない。焼き方なども一を聞けば十の答えが返ってくる。このマスターとおかみさんの人柄こそが肉を美味くする最大の要因に思える。失礼ながらあのお年で年中無休は本当に立派だと思う。一日も長く続けて欲しい焼肉店である。
ミノ刺は必食
柔らかな特上タン塩
特上カルビのタレ
<YAKINIQUESTよりヒトコト>
・ミノ刺、特上タン塩は是非
・マスターとの会話、店の風情、全てをひっくるめて味わいたいお店