名張市街から少し外れた、山河美しき地にその店はあった。
青い空と緑のコントラスト。流れる小川のせせらぎの音。
「ニッポンの夏」を凝縮したような風景を眺めつつ川沿いを走る。
と、川の向こうに「三太夫」の看板を見つけることができた。
店に近づくにつれ、その桁外れの大きさが徐々に分かってきた。
巨大な門をくぐると、40台ほど停められそうな駐車場があり、
その奥にようやく店への入口が見える。
さらに中庭を抜けるとようやくレセプションが現れた。
席は庭の緑が楽しめる窓際。上質な和の空間である。
まるで今からお見合いでもはじまりそうな雰囲気だ。
いくら夏とはいえ、Tシャツに短パン姿の自分を恥じたくなる。
メニューは単品もあるが、コースがお得。
部位や量の違いで10種類ほどある。もちろん伊賀牛だ。
皆で幾つかのコースを頼んでシェアすることにした。
扱っているのは正肉のみだが、文句の無い肉質だ。
こうした雰囲気の店ではお店の方が焼いてくれることが多いが
こちらでは自分で焼けるのもまた嬉しいところ。
一番印象に残ったのは「伊賀牛ロースの朴葉焼き」。
朴の葉に肉とたっぷりの味噌を乗せて焼き上げる一品だ。
焼き上げるにつれ立ち上る味噌の香ばしさに鼻腔をくすぐられ、
江戸の時代に「薬喰い」されたという牛肉の味噌漬けの味は
果たしてどんなものだったのだろうか、などと夢想するのだった。
(つづく)
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